ザキさんのハナシ
「山崎」っていう苗字の人はけっこうザキさんって呼ばれてるのを耳にする。
白い巨塔
華麗なる一族
不毛地帯
二つの祖国
大地の子
沈まぬ太陽
運命の人
そんなザキさんの小説で俺が読破したのは上記7作品。
最初は『沈まぬ太陽』だったか…これも日航機の墜落事故を題材にしててそれが背表紙のすじがきに出てたから興味を惹いた。それがこちらのザキさんとの出会いだったかね。
日航機が墜落したのは1987年、俺が5歳の時。
ぼんやり記憶は残っている。当時のガチャガチャと手で回す「チャンネル式」のテレビの前でずっと特番報道を観てた。それしかやってなかったし。
母親が「九ちゃん死んじゃった」とかをしきりに繰り返してたり、カタカナ表記で名前がいっぱい出てた…とか、その程度だけど。
だからなのかなんなのか、飛行機が墜落するってのはとんでもねぇ事、みたいな刷り込みが今でもある。当たり前だけど。
さて今年は戦後70年。「戦争法案」にも国が湧いてる。
ただ忌み嫌って反対するのではなく、きちんと意見を持ちたいね。もちろん容認するのであればその意見も同様。爆弾が落っこちるときに何も言わないって事は全てを受け入れることだからね(笑)
染みるぜ、マーシー。
とにかく、そんなニュースを始終耳にしていると山崎豊子なら今の時代をどう描いたのか…などと思う。戦前から現代までの日本を実際に生きてきて作品にしてきた人だったからね。
そんなザキさんだからこそ書ける「日本人と戦争」を描いた3部作。
『不毛地帯』
『二つの祖国』
『大地の子』
この中でもダントツにおもしろかったのは『二つの祖国』。いや、どれもこれまで読んだ中でもトップクラスにおもしろいんだけどね。
大戦当時のアメリカにいた日系二世の話。そして開戦から東京裁判までを網羅していて当時のアメリカと日本の関係性や歴史的事実もおそらくよく盛り込まれてる。知らなかった事だらけ。
ザキさんの小説はどれも取材量が半端じゃなく、圧倒的なスケールで当時を知らない俺に「時代」を教えてくれるいい教材になってる。フィクションなんだけど。
でも、この国が経験した戦争っていったいなんだったの?とか何がいけなかった?みたいな事は図書館やネットでただひたすらに資料を調べるよりもずっとおもしろい。
なにせ当時を生き抜いて来た人が身を削って後世に残したメッセージだからね。残された者達はしかと受けとらないと。
ところで「戦争を知る世代」であった祖父母の世代からまともに戦争の話って聞いたことが無い。
子供の頃に尋ねたことはあってもあまり多くは語ってくれなかったし、あったとしても分厚いオブラートにつつまれたお伽話みたいな話だったと思う。
「知る世代」が書いたフィクション、それは限りなく生の声に近いのではなかろうか。
遺作となった最後の作品、『約束の海』も旧海軍の父親を持つ海上自衛隊員の息子が主人公の話らしくて非常に興味深く思う。半ばで絶筆となってしまった事が悔やまれてならない。
それではまた。